「赤コーナー、関本さん」「うい」
「青コーナー、石井さん」「はい」
レフェリーが手持ちの紙を取り出して選手を呼び出す。二人とも聞いたことのない名前だ。
ややあって、若い感じの二人がそれぞれのコーナーの近くの段をのぼってリングのサイド
ロープをまたぐ。
二人とも25歳前後と見た。俺の体も大きくないが、二人はそれよりもう一回り小柄だ。
体つきはしっかりしていて、スポーツで鍛えた筋肉が頑丈に身体を覆っている。
どちらかというと赤コーナーの関本の方がモッサリしていて身体に厚みがあるようにも見え
るが、印象にほとんど差はない。二人とも165センチ前後の小柄な身体に、関本はグリーン、
石井は鮮やかなレッドの競パンを履いている。
二人ともいかにも気の強そうな顔で、リングに上がるとさっそく中央でにらみ合いを始める。
「・・・元気だなー、二人とも」
聞き慣れた声のした方向を見ると、案の定、荒井が道場の壁により掛かって腕を組んでいる。
「おお、こんちわっす」「おう、寺田君」
いつも通り、地黒で少々脂ぎった丸顔に穏和な笑顔を浮かべている。
「あの二人、知ってるんですか?」
「ああ、さっき聞いたんだけど、こんどフレッシュマンから上がってきた奴ららしいよ。
あと、あのほら、堀田っていう寺田君の相手。」そう言って荒井が俺を指さす。
「・・・ああ知ってるんですか」 「またぁ、もう俺のこと聞いたんだろ?」
荒井が思わせぶりに、横向き視線のまま俺の顔を見る、
「ええ、まあ」
「強えよ、あいつ。この俺が呑まれちゃったぐらいだからな。今度こそきっちりリングで
決着つけるけどさ、それでもちょっと怖えよ、あれとやるのは。」
リングでは、さっきの二人が互いのビキニを脱ぎ、勃起したマラを突きつけ合いながら
挑発の真っ最中だ。
「あいつら初めてのリングだろ? よくやるよな」
「どんな感じだったっすか?」やっぱり俺はそっちの方が気になる。
「うーん、なんか聞いたところだとフレッシュマンって亀頭責めが流行ってるみたいでさ、
たいていダウンの応酬になるらしいんだけど、責めがすげえんだ。しつけぇしさあ・・・」
荒井が思い出すのも嫌だというように、軽く下を向いてイヤイヤと首を振る。
・・・下半身の方はまんざらでもないらしい。
「荒井さん、すんげえ立ってますよ」
「おおぅ、・・・ったく、だからイヤなんだよ、このコスチューム」
上向きにそそり立った男根が、朱色のビキニ競パンを突き破らんばかりに持ち上げている。
試合の性質上、俺たちは普通のビキニを試合着として使わない。
あまりにも露骨に膨らんでしまうので、競パンやビルパンなどの布地が強化されたビキニを
使用することが多い。それでも荒井のビキニは股間を完全には守りきれていない。
「寺田君こそすげぇじゃねえかよ。今からそんな立ってると、リングで耐えられないぞ」
「荒井さんだって、今日の試合やばいんじゃないすか? だって・・・」
「おっ、試合が始まるぞ。」荒井が俺の声をさえぎるように声を上げる。
リング上の二人が、視線を最後まで合わせながら69の体勢をとる。
「あいつら、ライバルなんだろうな。フレッシュマンのトーナメント2位と3位らしいよ。
トーナメントでは戦ってないみたいだけど。」
つまり一人は準決勝で、一人は決勝で堀田に敗れたことになる。
決勝で敗れた者と、準決勝で敗れた者。・・・どうやらこのリングで事実上の2位決定戦を
やるつもりらしい。
「リングで人格変わるやつっているよな。二人ともさっきは人の好さそうな奴だったよ」
柔道でも経験がある。試合では鬼のような形相でガンくれて圧力かけてきた奴が、試合が
終わった途端にガラッと変わって「さっき頭ぶつけちまってすいません、痛かったすか」
などと話しかけてくるタイプだ。
どっちが本性かは不明だが、少なくとも、今の二人は共に、相手をこのリングの上で、ボロ
ボロにレイプしてやろうと思ってるはずだ。
・・・しかし、もう10分も経てば必ず決着がつくはずだ。
2位と3位の技の応酬・・・それらが全力でぶつかり合えば、絶対にどちらか沈む。
このデビュー戦のリング上で、ギブアップを叫び、ザーメンを噴き上げ、今まで経験のない
衆目の中で華々しくマットに沈むことになるのだ。
---カーン!---
ゴングが鳴った。二人ががっちりと組み合う。
「・・・ぐ・・・・む・・・」
激しい動きだ。二人とも縦に横に頭を動かし、相手のマラを強く責め立てる。
ボクシングのジャブの応酬のように、軽い刺激を積み重ねて相手にダメージを与え、
マラの回復を不可能にしていく。・・・レギュラー初試合とは思えない精密な責めだ。
二人とも相手の感度を確かめ合うように、右に左に頭を回し、振り立て、沈め、相手の神経
を削り取っている。いわば、くすぐり合いだ。
完全に硬直した二人の若いマラは、すべてを脳に伝えてしまう。
デビュー戦は二人ともモノにしたい。・・・そのためにも、目の前の宿敵にだけはペースを
握らせてはならないのだ。
2分・・・3分・・・神経の削り合いが続く。
「・・・きっちぃ・・・よく耐えられんなぁ・・・」荒井が股間を押さえてつぶやく。
俺も同じ気持ちだ。もちろん俺にも亀頭責めの経験はあるし、それで相手が耐えられずに
ギブアップしたことは何度もある。しかし、それを繰り返すとなると・・・。
「寺田君よく見といた方がいいぜ。今日はずっとあんな感じで耐えなきゃならないぜ。」
「・・・ぐえっ・・・」
「この二人の責めに耐えられないようじゃあ、こいつらを6分7分で落とした堀田には
あっさりカモにされちまうからな。」
厳しい・・・でも新人相手に負けたくない。
試合開始6分。
・・・最初に動いたのは、関本の足だ。
突然関本の膝がかくんと開き、分厚いケツの筋肉がもくもくと動き、
石井が頭をずらすと関本の尻がクンッと左に動く。反射的な動きで、こらえようがない。
「いいぞぉ、石井!」ギャラリーから声が掛かる。
ムッとしたのか、関本が石井の両膝を持ち、強引に開きながら頭をぐるんと回す。
石井が腰を軽く引く。・・・少し油断したか。
示し合わせたように、互いの責めに二人の足腰がぐらつき始める。
ライバル同士の意地の突っ張り合いの緊張に、ほころびが生じたようだ。
「おっ、動いてきたねえ」荒井が嬉しそうにつぶやく。
互いに青筋の浮き出たマラを晒し、亀頭を口に包んで不規則に頭を動かす。
きついマラ責め。・・・フレッシュマン同士の、ダウンの奪い合いだ。
腰が動き出すと止まらない。二人ともすでに限界を超えている。
「・・・二人とも苦しそうだな・・・もうそろそろ始まるぜ」
それから、約30秒後。
「・・・あっ!」
関本だ。・・・関本がマラを放してグンと反り上がった。
沸き上がる歓声。関本が頭を前後に動かして相手の技をこらえている。
「うーん」石井のするどい動き。・・・はじめてのチャンス、相方を一気に落としにかかる。
石井が下からしゃくり上げるように首を使うと、関本の白い太ももがその上で揺れる。
「・・・・つっ・・・・ああ・・・」関本の顔が真っ赤になっている。苦悶の表情だ。
「あっく」石井が鋭いピストン運動にスイッチ。関本の太ももがそれを挟む。
石井の右手が離れているのを見て視線を移すと、もだえる関本の鼻先で指を1本ずつ折っ
て見せている。・・・「なんだありゃ?」という声が聞こえる。
・・・俺には分かる。カウントをとって関本を挑発しているのだ。
「・・・ぐっ、うん・・・」関本がそれを見て目をつり上げ、石井のマラにぐぽっと
食らいつく。カウントは勝敗に関係ないが、挑発されて悔しかったのだろう。
「うーん」石井が強引に関本の太ももを開いて深く攻め込む。調子が上がってきたようだ。
「ぐっ、うん」関本の膝がはたつく。口呼吸できないので、効いてる様子が筒抜けだ。
関本の様子を窺うように、石井がぐいぐいと頭をしゃくる。
関本も必死に石井を責め立てるが、どこか気持ちが入っていない。
一回のダウンによってバランスが一気に崩れ、石井が大きく水をあけられてしまった。
「・・・うっ・・・くっ・・・」関本の腰が、緩やかな円を描く。
はた目にはのんびり動いているように見える。しかし関本の頭の中はそれどころではない。
ライバル石井の強烈な責め技によってもたらされた、関本の悶絶ダンスだ。
関本の腰の動きに対し、石井の頭が巧みにスナップをきかせながらついていく。
敵を休ませない。・・・互いに堀田がいなければ1位がねらえた選手、どこで逆転されるか
分からない。
「うんっ・・・」関本が腰を引く。
すかさず石井がケツの太い肉をつかんで、ぐいっと腰を強引に戻す。
「ぐあっ」関本がまたマラを放した。
石井の高速ピストン。関本の忍耐を振り切らんばかりの責め。関本の足が伸びる。
レフェリーが「ギブアップ?」と問いかける。「ノーノー!」関本が真っ赤になって答える。
「関本がんばれー」
「力を抜けー!持ってかれるぞー!」
ギャラリーから声が掛かる。フレッシュマンの連中だろう。
(・・・・・)俺だったら、この場面で声は掛けない。
リング中央でライバルのギブアップ技にあえいでいる最中に、そんな自分の醜態を、
むき出しの肛門やタマの揺れまでじろじろ見られている。・・・そんな「現実」ほど
リングで実際に戦ってる選手を追いつめるものはないからだ。
「・・・んっ・・・・んぐ・・・」
思った通り、応援を聞いてからの関本の腰の動きが、どこかぎこちない。
動きがカクカクとしている。「観客」の存在を、明らかに意識した動きだ。
こうなると、関本はさらに厳しい状況に立たされる。
リングで火花を散らす相手だけではなく、「責められてる自分」や「それを見てる観客」
との戦い。・・・リングに立つと、イヤでもそういったモノをしょい込む。
デビュー戦の関本に、はじめての試練がのしかかっている。
リングの中から「・・・んっ? ・・・んっ?」という声が聞こえてくる。
・・・やはり石井だ。関本の股ぐらを責め立てながら、声で挑発しているのだ。
「・・・ぐへっ・・・」関本が般若のような顔で、技をこらえている。
いや、技だけではない。宿敵一方的にやられる屈辱にも、歯を食いしばって耐えているのだ。
石井のキツいしゃくりに合わせて「がっ!・・・・あっ!・・・・」という声が漏れる。
マットに右手をついて、腰をしゃくりながら関本が一心に耐えている。
責めに戻れない。・・・しかし関本自身、必死にその機をうかがっているように見える。
敵に大きく水をあけられた大ピンチを、一気に引き戻すチャンスを・・・
突然、石井が口を放した。
「こいよ、おら」
石井、言葉で三度目の挑発だ。関本が真っ赤になって石井の右ケツをバンと強く叩く。
「んのやろっ!」石井のケツをぐいとつかみ、一気に引き寄せる。
(・・・まずい・・・)思わず俺が眉をしかめる。・・・関本は予想以上に短気のようだ。
関本が石井のマラをもう一度くわえる。《ぐちゅり》石井がそれに合わせる。
「んっ・・・・!」関本のケツの筋肉がピクンと動いた。
「ああー、あれやべえよ」荒井が右眉をしかめて言う。
「効いてるときに無理してくわえたろ。あれで引っかかっちまったな」
「・・・・! ・・・・!」
石井の波状攻撃。関本が太ももでパンパンと石井の顔を叩く。
関本の技が止まっている。・・・どうやら、はまってしまったらしい。
ぐちゅり、ぐちゅりと関本に追い討ちをかける石井。あからさまに放出を狙っている。
石井の亀頭を口からのぞかせつつ、視線もうつろにギブアップを拒否する関本。
レフェリーが関本の前に伏せて様子を見ている。明らかに危ない状況だ。
普通は口を放してこらえるところだが、関本自身にプライドがダウンを許さないらしい。
「関本口を放せー! いっちまうぞー!」外野から声が掛かる。
そう言われるとかえってダウンできなくなる。関本が官能に目を潤ませながら技をこらえる。
石井のマラをくわえながら若干顔を上げ、半寄り目状態で腰を振り、足を震わせる。
関本の腰をがっちりと固定し石井がぐりんぐりんと頭を回す。
「あうん!」やっと関本が口を放す。
「行けぇ、石井ー」石井のピストン。どうやらフィニッシュホールドになりそうだ。
「・・・・・・」関本が額をマットにつける。太い足が不規則にマットをひっかく。
「きまったな、ありゃ」荒井が腕を組んでかぶりを振る。
しかし関本も粘る。石井の火を噴くようなピストンを食らいながら、土俵は割ろうとしない。
この石井との10分間、たえずこの強敵の悶絶技を食らい続け、なおも放出を拒否し続ける。
さすがにトーナメントに勝ち残った男、ただでは勝利を譲らない。
膝をガクガクと揺らし、頭を振り、ひたすら石井の責めをこらえる。
客観的には石井のレイプに過ぎない。しかしそう見られても関本は耐え続けている。
・・・しかし、その忍耐も1分で完全に折れた。
「・・・ぎっ・・・ギブアップ・・・」追いつめられた声。
カンカンカンカンというゴングの音に合わせて、石井が関本の股ぐらを解放する。
関本のマラがズルンと立ち上がり、こらえぬいた濃いザーメンが、どくん、どくんと吐き出す。
「一本勝ち!」レフェリーが即座に石井の右手を挙げ、悔しそうに関本がどんとマットを叩く。
決着がついた。石井文句なしの快勝。関本の糸を引くような濃いザーメンがその証拠だ。
関本の身体に乗り上げるようにして、まだ石井が関本を挑発している。
「どう? 気持ちよかった?」という声が聞こえる。ここまで徹底すると気持ちいい。
よほどの遺恨マッチなのか。関本もその場で石井の胴を強烈なベアハッグで絞り上げている。
半分は冗談だろうが、・・・半分は本気だろう。
「すごかったなあ・・・関本って確か決勝で堀田に負けたんだろ?強いはずなだがなあ・・・・」
そう言いながら。荒井が首をかしげる。
「あの石井ってのも、堀田には7分で負けたらしいし・・・ 寺田君もあれは覚えといた方がいいぜ。」
「・・・何をですか」
「亀頭責めでダウンとって、敵のくわえ際を狙うの、奴らの定石らしいよ。
・・・アレを食らって、俺もやられた。 寺田君も、気をつけろよ。」
荒井が俺に真顔でアドバイスしてくれる。
・・・心配してくれるのは嬉しいが、少しは俺の技も信用してほしいものだ。