リングを降りると、オーナーがA4版の紙を持って道場に入ってくる。
その紙を、道場の壁に貼る。
・・・その紙が何か、俺は分かっている。
今週の土曜日の対戦カードだ。いつもこのタイミングで貼りに来るのだ。
自然と、人が集まってくる。
がやがやとうるさくなる。その騒ぎを聞いて、また人が集まる。
俺もその輪の中に入る。・・・俺も今週は対戦予定が入っている。
俺はレギュラークラスの4番目に入っていた。
相手は・・・「堀田」と書かれている。
重岡の方を向くと、「ああフレッシュマンクラスから上がってきた人だ」とこたえる。
「寺田さん知らないっすか?フレッシュマンクラスでトーナメントがあって、
それで確か優勝した人っすよ。・・・クラスは下だったけど、優勝するぐらいだから
強いんじゃないかなあ。」
「今この中にいます?」
「・・・ええと・・・あ、あの人だ。」
重岡が指さした方向を見ると、横を向いてTシャツを脱いでいる男に視線が当たる。
体は筋肉質だがよく締まっていて、黒い競パンがよく似合っている。
髪は短いが、一見していかにもサラリーマン風の常識的な印象を受ける。
眉の太さが目に付く濃い顔立ちだ。
掛けていた黒縁のメガネを外し、隅っこの棚にそっと置く。
挨拶しに行こうとする俺を、重岡の節くれだった手が制止する。
「今はやめたほうがいいっすよ。・・・ほら、今から試合みたいじゃないすか。」
確かにそのようだ。メガネを置くと、小走りにリングに向かって走っていく。
「見たことないっすよね。研究するチャンスっすよ。」
リングの上で堀田を待ち受けているのは・・・堀野だ。
あいかわらず肩の筋肉が盛り上がり、首がほとんど無い。
柔道でも、ああいう体が一番やりにくいのだ。背が低く、重心はさらに低い。
動きは鈍そうだが、あの重量感だけでも十分戦えそうな体をしている。
ぽんぽんと跳んで、ウォーミングアップをしている。
相手の強さを知ってか知らずか、白い競パンはきちきちに膨れている。
堀田と堀野が競パンを脱ぎ、中央にすすみ出る。
堀田よりも、堀野の方が5センチほど低い。やや見上げる形だ。
マラは半立ちぐらいか。カチカチではないが、十分にこれからのことを意識している。
互いに見合う。堀野も目が鋭い方だが、堀田も負けずに視線を跳ね返す。
堀野はさほどレギュラークラスの中で強い男ではない。しかし、中堅どころとしてなかなかいい試合をする。
堀野と、あの男がどんな試合をするか。・・・腕前を測るには、ちょうどいいチャンスだ。
レフェリーの指示で、二人が69の体勢に向かい合う。
いつでも襲いかかれるように手を半ば前に出し、二人とも横目でレフェリーの方を窺っている。
・・・張りつめたような、緊張の空気が流れる。
《カーン!》
互いに組み合い、ずぶりとマラをくわえる。
(?)
心なしか、堀野の腰がぴくんと前に動いた気がした。
気のせいなのか・・・試合は静かに、しかも激しく展開している。
堀野はタフな男だ。しかし堀田もそれに動じる様子はない。
音もなく、ただ激しい頭の動きだけが試合の激しさを物語っている。
堀野は深く堀田のマラを呑み込み、喉奥で若者の亀頭を強く洗う。
堀田の方は浅くくわえ、首を振りながら堀野のマラを曲げんばかりに責め立てている。
どちらもきつい技だ。気を抜けば持って行かれそうな試合運び。
しかしどちらも譲らない。・・・時間が、ゆっくりと経過していく。
・・・
変化に気付いたのは、開始から2分ほど経ったときだった。
(堀野が・・・?)
堀野の責めが、遅くなっている。
堀田の方は変わっていない。相変わらず激しく、いろいろな角度から先輩を責め立てる。
しかし堀野の方の喉フェラは、目に見えて緩慢になっている。
いつもの堀野ならピッチは早いはずだが、機械的にコクンコクンと頭を振っている印象だ。
堀田の気迫あふれる攻めに対し、堀野からは先ほどのような気迫を、どこか感じさせない。
堀田が先輩の太腿付け根を両手で支え、頭を振りながらぐいっと引き寄せる。
それから半秒遅れて、堀野のケツがかくんと動いた。
(!)
リングの周りがどよめく。堀野がはじめて、後輩の攻めに反応した。
追いすがるように、堀田ががんがん頭を動かす。
堀野が嫌がっているのがわかる。左に寄っていたケツがかるく後ろに引き、また戻る。
堀田が左、右、左、と頭を振る。堀野の腰が今度は右に動いた。
先輩のピッチがさらに弱まっている。二センチほど残してくわえた堀野の口が、今にも
止まりかけている。
堀田が、さらに先輩を追い込む。
《ぐりっ》堀野の亀頭を奥まで押し込み、亀頭をねじ切らんばかりに頭をずらす。
《ぐりっ》もう一つ。
《ぐりっ》もう一つ。
「ぷはっ」
ついに、堀野が口を放した。
《ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん》
堀田の猛攻が始まった。
自分の太腿に頭をつけてこらえる先輩をよそに、ぐいぐいと強く頭を振る。
《ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん》
後ろの方で喝采が起こっている。
フレッシュマンクラスの連中か。自分のクラスのホープの活躍に沸いているのだろう。
《ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん》
堀野の方は、後輩の太腿の付け根に頭をつけたまま、ハァハァと必死に息を整えている。
攻めに戻ることができるか。・・・いや、ここまで攻め込まれてはもう戻れない。
《ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん》
堀田のピッチは衰えない。もう完全にイカせに入っている。
先輩のケツがぐるん、ぐるん、と回る。腰をがっちりと捕らえて確実についていく。
《ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん》
堀野が頭を上げる。口を半開きにし、官能に目の潤んだ顔が、ぼうっと上を見上げる。
短く太い足の膝がぴくんと横に持ち上がり、パンと音を立てて堀田の顔を挟む。
堀田の動きは止まらない。堀田の頭の動きに合わせて、堀野の体がぐんぐんと揺れ動く。
・・・・・・
時間がゆっくりと過ぎていく。
両者の動きに、ほとんど変わりはない。
ただ一つの方向に、試合は進んでいく。
・・・・・・
「あっく」
突然堀野のごつい手が後輩の頭にかぶさり、ぐちゅっと力強く引き離した。
《カンカンカンカンカン》
ギブアップ。・・・堀野が、ついに力尽きた。
赤くふくれあがった堀野の男根が、ゆっくりヒクついている。
よほど激しい責めだったのだろう。堀野の体がそのまま傾き、仰向けにどしんと倒れる。
「一本勝ち! ・・・勝者、堀田!!」
どおっと歓声が沸き起こる。
フレッシュマンクラスの人間が、レギュラーを圧倒して勝ったのだ。
顔をほころばせて、堀田がレフェリーの勝ち名乗りを受ける。
こう見ると普通の体育会青年に見えるが、マラは上ぞりに強く勃起している。
先輩の攻めも、強烈に効いていたのだろう。でもそんな事実も今マット中央に沈んでいる
堀野には全く届かないはずだ。
堀田がリングを降りると、4,5人の男にすぐ囲まれた。
そのすぐ後に、リング中央のの堀野がゆっくりと立ち上がる。
のっそりとコーナーまで歩き、青いコーナーポストをつかんで軽く腰を落とす。
マラがまだカチカチになっている。堀野にとっては痛い敗戦だっただろう。
後ろから、ぐっと両肩をつかまれる。
振り向くと、大柄なオーナーがTシャツに赤い競パンの格好でニコニコと笑っている。
この力強い笑顔を見ると、自分がこんなハッテン場まがいの場所で69に興じている
ことが信じられなくなってくる。
もう50近いと思うが、69の強さも半端ではない男だ。この道場を開いただけはある。
「・・・試合、見たでしょ?」
オーナーが、リングを指さす。
「・・・ええ・・・」
堀田のことだ。つまり土曜日の堀田戦に絡めて言っているいるのだろう。
「ああいう選手だからさ、他には頼めなくてねぇ・・・ま、よろしくお願いしますよ。」
ニコニコと笑って言うが、まぁレギュラー選手である以上、辞退するのも格好悪い。
「わかりました。」
オーナーがぽんぽんと俺の肩を叩いて、裏口の方に歩いていく。
堀田の方を見ると、4,5人ぐらいの仲間と笑いながらしゃべっている。
歳は25歳ぐらいか。目の光は鋭いものを感じるが、普通の若者にも見える。
堀野を攻め落としたあの試合運びを見ると、ただのフレッシュマンクラスではない。
堀野も油断した部分はあろうが、またやれと言われても、やったところで堀野はまた
あの強烈な責めの前にマットに沈むだろう。
そんな相手と、土曜日に戦うのだ。
俺のマラは次の試合に向けての期待と不安に、むくむくと膨らんでいた。