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003  試合前 2
(鴨井、河野、好井、土屋、藤岡、堀田)

道場「T」での試合。俺は間もなく始まる俺たちの試合に向けて、ぐるぐると頭を動かす。

第4リングの上では、若い選手達ががっぷり四つになり、盛んに手を動かしている。

若いのに、二人とも試合巧者だ。互いに亀頭を握りながら、左右、上下、ラウンド、バイブなど、様々な技を駆使して相手の出方を待っている。互いの利き手が反対らしく、腕を互いにぶつけながら、ポジション争いをするようにヒジを動かしている。

少し効いているらしく、互いに顔は紅潮し、鼻息の音が聞こえる。

互いに強い相手だ。・・・このリングでは、どちらかがマットに沈まねばならない。

俺は会場を見回す。さっき俺が来たときよりも、さらに人が増えている。

いかにも強そうな、男達の集団。道場「T」がイカセ合いレスリングを採用してから、いかにもレスラー然とした、ごつい男が増えてきた気がする。

しかし、こいつらの半分が、このリングの真ん中でザーメンを噴き上げ、肩を落として帰ることになるのだ。

 

 

「鴨井くん、いいぞ! 持ち手をスジに絡ませて、そう! そうだ!」

「河野くん、足のポジションを変えようか! そう! そこから手首をひねって! そうだ!」

互いのサイドには二人のトレーナーらしき男が手でメガホンをつくって、互いの選手に声をかけている。

トレーナーのような職はないはずだが、稽古の中でそういう関係が結ばれたのだろう。

 

第2リングでは、試合が始まろうとしている。好井と土屋がリング中央でビキニを下ろし、リングの端に投げる。

二人とも、みごとに勃起している。リングに上がって相手を見ると、どうしても勃起してしまうのは仕方がない。

 

「赤コーナー、164センチ、86キロ、15センチ!・・・よしいぃー・・・だいーちぃぃぃ!!」

好井が勃起した竿を不自然に左右に揺らしながら、土屋の目を見て右手を高々と挙げる。

「青コーナー、170センチ、82キロ、16センチ!・・・つちやぁー・・・よしーひろぉぉ!!」

土屋は少し物静かに好井の胸板のあたりを見つめ、何かを考えるようなそぶりで右手を高く上げる。

レフェリーの指示で二人がリング中央により、互いにメンチを切りながら額をつける。

竿の先が触れ合うような距離で二人はしばらくにらみ合う。これはここのリングを開設したときの取り決めで、必ずやることになっている。・・・といっても、「にらみ合ってください」という指示はあるものの、「長時間メンチを斬り合ってください」とは言われていない。このあたりは、選手の個性に委ねられているところだ。ベテランであればあるほど、そのあたりのパフォーマンスが円熟味を増し、いいレスラーに仕上がっていく。

 

レフェリーの指示により、二人が下がってそれぞれのコーナーに背中をつける。

沈黙。

カーンというゴングの音と共に、二人はまっすぐ走りより、がっきと組み合った。

 

 

次の瞬間、後ろから大きな太い声が響きわたる。

「ダウーン!!」

大きな声に驚いて、思わず第3リングの方を振り向く。69戦を展開している、ベテラン同士の試合だ。

手前の男が反り上がり、体をよじって上を向いている。・・・藤岡だ。

 

藤岡は相変わらず体毛が濃く、猪首で近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

レスリングでもよく試合をやっているが、藤岡も40代後半、最近は怪我のために69の試合によく出場している。

ミドルレンジでの攻め合いが得意で、KOを量産するワザ師として恐れられていた。

 

そんな藤岡が、今日は得意の69戦で相手に圧倒されている。

左足を巻き込まれ、開脚ぎみにふとい竿を深くくわえ込まれ、熱い息を吐いている。

頑張りすぎて、ダウンが遅れたか。藤岡もベテランの狡猾さで腰の角度をずらす技をもっているが、相手がそれを許さない。

・・・よく見ると、相手は堀田だ。デビュー戦で、中堅だった俺をKOした男。

藤岡のよがりっぷりを見ながら、俺の竿が反応してくるのを感じる。

 

「はっ・・・く、あぅっ・・・・」

ジュッポジュッポという音とともに、堀田の締まった体がリズミカルに藤岡のふとい竿を呑み込む。

乗り上げることもできるが、正対の姿勢でも十分、堀田は藤岡を圧倒できると踏んだらしい。

むしろ、藤岡の大ぶりの竿を長く取り、大きなストロークで強烈な杭打ちピストンをかけていく。

 

「あっは・・・・あっは・・・」でかい腰を跳ね上げ、藤岡の苦しみの時間が続く。

「藤岡さん、ギブアップ?」

「いやいや、ねぇっすよ、こんな野郎のワザで・・・おぅっ」

藤岡が声をしぼり出す。半分は、自分に言っているように見える。

しかし、いまや藤岡は堀田に操られている。新旧のワザ師対決、今のところは堀田が藤岡を圧倒している。

 

ここで堀田が、グポグポと音を立てて藤岡を揺さぶる。

「おーーうっ」

俺の方を向いている藤岡のでかいケツが、堀田に抱え込まれて前後に揺れている。

堀田が何をしているか、この角度からは見えないが、それでも俺には分かる。

・・・あれは、『立たせ捕り』だ。

 

「・・・ぐっ・・・あああっ・・・」

藤岡の男根は大ぶりで、攻めにくい。しかし、堀田の喉に、ワザがきつくきまっている。

藤岡はタフネスが売りの男だ。堀田は決着を急がず、長期戦の立たせ技を選択したようだ。

「・・・ぐへぇっ・・・」藤岡の足首がピクピクとうごく。あれを見ると、俺の股間も反応する。

あの技のきつさは、あれで敗れた男にしか分からない。

 

プライドの高い藤岡が、何分持ちこたえられるか。

 

 

トントン、と肩を叩かれる。

振り向くと、さっきまで向こう側にいた斎藤だ。

「もうすぐっすよ」斎藤が、親指で後ろを指し示す。

見ると、第4リングの状況が大きく動いている。

 

 

 

「・・・あっ・・・あぐっ・・・」

若者同士のしごき合い戦。鴨井対河野。

青コーナーの河野が大きく腰を引き、鴨井の胸板に額をつけている。

鴨井の小刻みな手技が、河野の亀頭をきつく捕らえている。

 

「河野くん、ギブアップ?」

「いえいえ、ノーノー!」

河野が鴨井の胸に額を当てたまま、震える声で敗北を拒否。

追い詰められながら、鴨井の竿をしっかりつかんでいる。しかし、動かない。

 

鴨井が手のスピードを上げる。

「うっ・・・ふんっ・・・」

河野は苦し紛れに、マットの上で足踏みを繰り返す。

「鴨井くん、逃がすなよ!」

鴨井は手の回転をあげる。自分の手の中で突っ張りきった河野の竿を手のひらの中で包み、クキクキと音を立てる。

「あはぁぁっ」

河野のヒザが開き、腰がガクンと落ちる。鴨井はすぐさま河野の亀頭の先に手のひらを当て、強く回す。「おーぅっ」河野のヒザが揺れる。

鴨井の追撃。河野の筋張った竿を柔らかく包み、コキコキコキとしごき技をたたみかける。

「くっそ負けねえっ、あーんっ」

河野の顔が赤らむ。試合に出る以上は若者の代表だ。プライドだけが河野の心を支える。

「・・・まっ・・・負けないっ・・・・す・・・・」

 

 

しかし次の瞬間、鴨井の手から、白い液体がボトボトと垂れ落ちる。

河野のザーメンだ。鴨井の手の中で河野はついに鴨井の技に屈し、ザーメンを噴き上げてしまった。

・・・河野は、最後までギブアップをいわなかった。最後まで、この勝負にかけていたのだろう。

「一本!」というレフェリーの声と共に、鴨井に寄りかかりながら河野がガックリとヒザをつく。

「あー、いっちゃったねえ・・・」

鴨井が体を離すと、河野はそのまま前に倒れかかり、顔を右に向けたままズシンと音を立ててマットにダウン。

惨めに敗れはしたが、最後まで勝負を捨てなかった。

 

 

 

 

 

「試合時間4分35秒、逆手しごき固め! 勝者・・・鴨井!」

レフェリーが鴨井の右手をさっと挙げる。鴨井はにこやかに勝ち名乗りを受ける。

鴨井の左手から、さっき受け止めた河野のザーメンが垂れ落ち、糸を引く。鴨井は、左利きのようだ。

 

「第4リング第3試合、赤コーナー、斎藤選手! 青コーナー、寺井選手! リングに上がってください!」

「さあ、行きましょうか!」

斎藤は俺の顔を振り返って笑顔を見せ、広くごつい背中を見せてリングに足をかける。

俺もそれに従うように、リングに足を向ける。

・・・いよいよ、俺の試合だ。

 

俺がリングに足をかけたところで、後ろから野太い声が聞こえる。

「・・・ギ・・・ギブアッ・・・・プ・・・・・」

おおおおっ、という声と共に、「一本!」という声が聞こえる。

振り返ると、ふとい足を一本跳ね上げられた藤岡のでかいケツが、ピクン、ピクンと動いている。

藤岡としては、一回り年下の堀田に相当対抗意識があったはずだが、リングの上で、みんなの前でしっかり差を見せつけられてしまった。悔しさは格別だろう。

試合に年功序列はない。若手でもベテランでも、平等に恥をかくリスクを背負う。

それを受け入れられるものだけが、リングに上がる資格を持つ。藤岡はそういうリスクを自分から引き受ける男だ。きっとすぐに立ち直るだろう。

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