top of page

奥の黒い扉を開けると、そこは試合場だ。

「・・・は・・・んぐ・・・・」

すでに試合は進行している。道場「T」には4m四方ぐらいの小さなリングが4つ常設されていて、その中でそれぞれ2人の男達が絡み合い、激しい試合を展開している。

ルールは69,しごき合い、イカセ合いレスリングなど、対戦カードによって自由に選ぶことができる。

 

手前の第1リングでは、一人の男が相手の首を両足ではさんでマットに押さえつけ、相手の左足を脇に抱えて強く開脚させながら、突き立った竿を一方的にしごいている。

「・・・ぐ・・・・むぐ・・・あっ」

「和田さん、息整えて! 返せるよ!」

 

和田と呼ばれた男が、相手の足を抱えながらリング中央で必死に自分の足をばたつかせ、暴れている。

強烈なしごき技と抑え技を同時にかけられている。・・・技から早く逃れないと、イッてしまう。

手が空いているので、相手の手を取ってしごき技から逃れたいところだ。・・・しかし、自分の竿をしごいている相手の腕に手をかけたら、ギブアップと見なされてしまう。

「《ごしごしごし》おおおおおうぅぅぅ!」相手の手技が速まる。

和田の自由な右足がピンと硬直し、頭がぶんぶんと揺れる。

「和田さん頑張れ-! あきらめるな!」

競パン姿にTシャツを羽織った男が、リングサイドでバンバンと拳を叩きつける。

「はおおおおおっ」和田が腰をカクカクと振りながら、自分の竿をしごく相手の手に太ももをこすりつけ、額に青筋を立てて昇天技をこらえる。

・・・最後まで見たいが、俺は斎藤を探さねばならない。俺は彼らの試合を尻目に、辺りを見回す。

 

 

「あぁ、寺田さん!」

第2リングのサイド席に座っている男に声をかけられた。好井だ。

「ああ、どうも、お疲れ様です」

好井は俺より少し背が低く、むっちり体型だが力は強い。何度も手合わせしたことがあるが、フェラ技にもレスリング技にも定評がある。自前のレモンイエローのビキニを身につけ、太い腕を組みながら、愛嬌のある顔をほころばせている。

「今日はちょっと混んでますね。俺次なんで、よかったら応援してください」

「相手は?」

「土屋さんす。強いんだよなー、弱点教えてくださいよ」

好井は快活な笑顔を見せながら、ふくれ上がったビキニに手をやって、しきりに中身のポジションを直している。

「困ったなー、勃起しちゃって・・・試合なんで、しょうがないですけどね」

そう言っている途中で、カンカンカンというゴングの音に混じって、「一本!」という声が聞こえる。

一瞬さっきの試合かと思ったが、第4リングの方だ。

第1リングの方ではなんとか和田がロープにエスケープしている。相手が悔しそうにマットを叩く。

 

第4リングで、竿を勃起させたヒゲ面の男が、がっちりした体全体でガッツポーズをしている。

その脇で、赤いアンクルベルトを着けた男が体をひねり、ピクピクと痙攣している。・・・どうやら、あいつがイッてしまったようだ。

「ああ、今野さん惜しかったなー・・・あいつ、さっき2回ダウン取ったのに、最後巻き込まれちゃったんですよね。」

ヒゲ面の男は、自分の鋭角に勃起させた竿には気にもとめず、自分の脱ぎ捨てたらしい青いビキニを手に取り、さっさとリングを降り、勃起した男根を揺らしながら大股で歩いていく。

「あいつ、本当に強いなー・・・俺半年前にあいつとやって、そのときはKOで勝ったんですけど、なんかあいつ強くなってるなあ。次も勝てるかわかんないっす・・・あっ、いいぞ!」

好井が第2リングを凝視している。俺も第2リングを見ようとしたところで、「ダウーン!」という太い声が響きわたる。

レフェリーが右手を挙げている。リングの上では69の体勢で、手前の青いアンクルベルトの男が反り上がって足をばたつかせている。

・・・ここは69戦を選択したようだ。

 

「ああー、小嶋くんやばいなー・・・あいつもうダウン3回目だし、もうキマっちゃうな多分。」

好井がやにわに立ちあがり、腰をひねりながら肩を回しはじめる。自分の試合の出番が来ると直感したんだろう。

「ああ、斎藤さん探してるんですよね。彼さっき第4のあたりにいましたよ」

好井はそう言うと、マットの試合を凝視しながら首を回し、軽くマットを跳ね始める。

「どもっす、試合頑張ってください」「うっす、ありがとうございます」

俺は好井の肩を叩いて礼を述べ、第4リングのあたりを目で探し始めた。

 

 

・・・いた。

俺の対戦相手、斎藤だ。斎藤は俺よりも少し背が高く、30代後半の真面目そうな顔立ちの男だ。ちょっと体型は丸みがあるが、試合になるとあのモッサリした体格からは分からないぐらい動きも俊敏で、フェラも手こきもいける。前回は、確か5分ほどでKO勝ちしたはずだ。

斎藤はさっき好井が言ったとおり、第4リングのそばに置いてある椅子に腰を下ろし、腕を組みながら試合を眺めている。俺が近づいてきたのに気づくと、自分から立って嬉しそうに微笑みながら頭を下げた。

「あっどうも! 今日はよろしくお願いします!」

 

俺と斎藤は礼をかわし、がっちりと握手をする。斎藤はグリップが強い。俺の手を引き寄せるようにしっかりと握手をすると、細い目をさらに細くしてにこりと笑う。

自前のものらしい斎藤の黒いビキニは、少しいびつにふくれているが、俺は稽古の中で斎藤の勃起サイズも硬さもよく知っている。このふくらみは完全ではない。おっとりした顔つきだが、それだけではこのリングで勝っていくことはできない。

 

「いま第4が始まったばかりで、リングサイド空いてるんですけど、申し込んじゃいますか?」

斎藤がすぐにリングに目を向ける。そういうところも、いかにもデキる男だ。

俺が大きく頷くと、斎藤はうれしそうに頷き返し、小走りでリングサイドの係員のところにいく。

「えーと、17番の寺田と斎藤です。次の試合に入りたいんですが・・・」

「わかりました。試合スタイルはどうしますか?」

「ええと、レスリングで・・・」斎藤は少し振り返って俺の顔をうかがい、すぐに「はい、レスリングで。」と復唱する。

「わかりました。リングサイドでスタンバイしててください」「分かりました。ありがとうございます」

斎藤はそう言うと、俺に向かってにっこりと笑い、親指を立てて見せた。

コンサートのチケット2枚取れたみたいな表情だが、これから俺たちは相手がイクまで懸命に戦うのだ。

 

 

 

俺は青コーナー用の席にどっかりと座り、第4リングの上に目をやる。

さっきスタートしたばかりだ。選手達は二人とも若く、しごき合いを選択したようで、仁王立ちに足を踏ん張りながら、互いの竿をつかんでしきりに手を動かしている。

膠着しているようにも見えるが、耳を澄ますと互いに息が荒く、すでに互いのポイントを探り当てはじめている。

長期戦もあるが、突然のKOでいきなり自分の出番になるかもしれない。

俺はついたばかりでまだほぐし切れていない体を急いでストレッチしはじめる。

 

斎藤の方は、すでにストレッチが終わったのか、首を左右に傾けながら、体の前で組んだ腕を動かさずにまっすぐに試合を見ている。選手の中には、人の試合を見ないように歩き回るタイプもいるが、斎藤は違うようだ。若いのに、そういうところは落ち着いているように見えるのが、対戦相手としてはなんとも怖い。

 

 

「・・・・あっ、あっ、いくうううう!!」「一本!」

「・・・・ぐっ、もうだめ、おおおおおう!!」「一本!」

二つの方向から、男達の終焉の声が聞こえる。

振り返ると、さっきの第1リングと、第2リングで、同時に決着がついたらしい。ゴングが二カ所から立て続けに打ち鳴らされる。

隣で試合がきまると、ついこみ上げてしまう選手がいる。どうやらそのタイプらしい。

 

隣の第2リングでは、さっきの小嶋が耐えきれずに出してしまったらしい。仰向けに竿を立てて、まだ放出の真っ最中だ。

「試合時間10分2秒・・・69フェラ固め、勝者・・・加藤さん!」

レフェリーが小嶋の対戦相手の手を、高々と挙げる。パチパチパチという拍手が鳴り響く。

小嶋は肩を落としながら、自分の噴き上げてしまったものを懸命にふいている。

 

第1リングでは、和田が男の下敷きになっている。・・・負けてしまったか。

しかし、様子がおかしい。和田に乗り上げている男が体をねじり、息を荒くつきながら、体を痙攣させている。

どうやら、とっさの逆転技がきまったようだ。和田がその男を脇にどけると、男が横向きに体を横たえ、目をぎゅっとつぶりながらまだ痙攣が収まっていない。

これに続いて、試合に勝利したらしい第1リングの和田が、ゆっくりと立ちあがる。

「試合時間7分11秒・・・逆さねじり勃起固め、勝者・・・和田さん!」

遠くのリングで、和田が誇らしげに目を細め、手を振って拍手に応えている。

相手のザーメンはついていない。あの体勢から判断すると、相手は和田に下からロックされたか、もしくは和田を押さえつけたまま返し技を食らって、下向きにザーメンを噴いてしまったようだ。・・・確かに、和田は返し技の達人だった。

 

 

隣の第2リングで、レモンイエローのビキニを着けた男が、リングのロープに足をかけてマットに入る。

あの男は、好井だ。さすがの好井も試合は緊張するらしく、少し硬い表情で厚い胸板を上下させながらマットを跳ねている。

「好井さん、頑張れよ!」

会場にいる他の選手の声援を受け、好井がそこに向かって表情を緩め、手を振ってみせる。

ふと第4リングのサイド席に座った俺の方を向き、軽く目配せしてみせる。緊張しながらも、冷静さは失っていないようだ。

俺は好井に向かって会釈を返し、再び第4リングに目を向ける。

 

リングの向こうにいる斎藤に目を向ける。斎藤は相変わらず腕を組み、リング上の1点を見つめている。

若い選手達のしごき合いは、はやくも中盤に入っている。竿をしごきあう音が湿りを含み始め、硬直した竿をさらに速く刺激しはじめている。選手達の息も、荒くなってきている。

・・・こいつらの試合が終わったら、いよいよ俺たちの出番だ。

bottom of page